■フラット35とは? フラット35の基本情報
フラット35は、住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の住宅ローンです。以下にその基本情報を示します。
金利: フラット35の金利は借入期間中ずっと固定されます。例えば、2024年6月時点の金利は年利1.2%から2.0%程度です。具体的な金利は金融機関や融資額、返済期間によって異なります。
借入期間: 最長35年間。借入期間を選択できるため、ライフプランに合わせた返済計画が可能です。
借入金額: 物件価格の最大90%まで借り入れが可能です。ただし、自己資金が10%以上必要です。
利用対象: 新築住宅だけでなく、中古住宅の購入やリフォームにも利用できます。
返済方法: 元利均等返済と元金均等返済の2種類から選択可能です。
■フラット35の利点とデメリット
メリット
長期固定金利: 借入期間中の金利が固定されるため、将来的な金利上昇のリスクを回避できます。例えば、借入金額3,000万円、金利1.5%、返済期間35年の場合、毎月の返済額は約87,000円で固定されます。
多様な利用目的: 新築住宅だけでなく、中古住宅やリフォームにも利用できるため、古民家の再生にも適しています。
返済期間の選択肢: 借入期間を最長35年間で選択できるため、ライフプランに合わせた返済計画が立てられます。
借入限度額の高さ: 物件価格の最大90%まで借り入れが可能で、自己資金を抑えて購入・リノベーションを進められます。
デメリット
自己資金の必要性: 物件価格の10%以上の自己資金が必要です。例えば、3,000万円の物件を購入する場合、少なくとも300万円の自己資金が必要となります。
金利の高低差: フラット35の金利は金融機関によって異なるため、事前の比較検討が重要です。最安の金利が1.2%でも、高い場合は2.0%になることもあります。
融資条件の厳しさ: 古民家の場合、建物の状態や耐震基準を満たす必要があり、場合によっては改修が必要となることがあります。例えば、耐震基準を満たすために100万円以上の改修費用がかかることもあります。
■古民家とフラット35の関係
古民家はフラット35が組めない理由
古民家は、一般的な住宅ローンと比べてフラット35の適用が難しい理由がいくつかあります。具体的には、以下のような問題点が挙げられます。
耐震基準の不適合
フラット35の融資条件の一つに、住宅が現行の耐震基準を満たしていることが求められます。多くの古民家は築年数が古く、耐震基準を満たしていない場合が多いです。例えば、築50年以上の古民家は現行の耐震基準に適合していないことが一般的です。
建物の劣化
古民家は長年の使用による劣化が進んでいることが多く、構造的な問題や設備の老朽化が見られます。これにより、フラット35の融資条件をクリアするのが難しくなります。例えば、屋根や基礎部分の修繕が必要な場合、数百万円以上の改修費用がかかることがあります。
書類の不備
古民家の多くは、建築当初の設計図面や検査済証が揃っていない場合があり、これもフラット35の申請における障壁となります。必要な書類が揃わないと、審査が通らないことが多いです。
■フラット35を利用した古民家再生のメリット
フラット35を利用することで、古民家再生には以下のようなメリットがあります。
長期固定金利での安定した返済
フラット35の金利は借入期間中ずっと固定されるため、将来的な金利上昇リスクを回避できます。例えば、3,000万円を1.5%の金利で35年間借り入れた場合、毎月の返済額は約87,000円で固定されます。
多様な利用目的
フラット35は中古住宅の購入やリノベーションにも利用可能です。これにより、古民家の再生プロジェクトを一貫して進めることができます。
最大90%の融資額
フラット35では物件価格の最大90%まで融資が可能です。例えば、4,000万円の古民家を購入する場合、3,600万円までのローンを組むことができます。
古民家リノベーションの費用について詳しく書いている記事もありますので併せてチェックしてみてください
■フラット35を活用するための条件
古民家でフラット35を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
耐震改修
古民家が現行の耐震基準を満たすためには、耐震改修が必要です。これには専門の建築士による診断と改修が含まれます。耐震改修には100万円から500万円程度の費用がかかることがあります。
必要書類の整備
建築確認済証や検査済証など、必要な書類を整備する必要があります。これがない場合、代替書類や証明を取得するための手続きが必要です。
リノベーション計画の立案
リノベーション計画は、専門家と共に詳細に立てる必要があります。これには、構造の強化、断熱改修、設備の更新などが含まれます。総額で500万円から1,000万円程度の費用がかかることが一般的です。
■古民家でフラット35を組む方法
1. 物件探し
フラット35を利用して古民家を購入する際の第一歩は、適切な物件を探すことです。古民家をフラット35の対象とするためには、リノベーション後にフラット35の基準を満たすことが重要です。
築年数: フラット35の適用条件を満たすためには、築50年以上の物件でも耐震基準を満たすことが求められます。
物件価格: 物件価格が4,000万円の場合、フラット35では最大90%(3,600万円)まで借り入れが可能です。
立地条件: 交通の便や周辺環境も重要なポイントです。都市部から離れた田舎の古民家でも、生活に必要なインフラが整っていることが望まれます。
失敗しない古民家の選び方はこちら
2. フラット35の申請プロセス
フラット35を利用するための申請プロセスには、いくつかのステップがあります。
事前審査: フラット35を取り扱っている金融機関で事前審査を受けます。事前審査では、申請者の収入、借入金額、返済能力がチェックされます。
例えば、年収500万円の家庭で3,000万円を借り入れる場合、返済負担率が25%以下であることが求められます。
必要書類の準備: 建築確認済証、耐震診断書、リノベーション計画書などの書類を揃えます。これらの書類が揃っていないと、審査が通りません。
耐震診断書の取得には、10万円から20万円程度の費用がかかることがあります。
本審査と契約: 事前審査が通過した後、本審査を受けます。本審査では、物件の詳細やリノベーション計画が詳細にチェックされます。
本審査が通過すると、フラット35の融資契約を結びます。この段階で印紙税や融資手数料が発生します。印紙税は契約金額に応じて1万円から3万円程度、融資手数料は借入額の2%程度です。
3. リノベーション計画の立案と実行
フラット35を利用して古民家を購入した後、リノベーション計画を立て、実行に移します。
リノベーション計画の立案: 専門家と共に、耐震補強、断熱改修、設備更新などのリノベーション計画を詳細に立てます。総額で500万円から1,000万円程度の費用が見込まれます。
例えば、耐震補強に300万円、断熱改修に200万円、設備更新に300万円を見込んだ場合、合計で800万円の予算が必要です。
施工業者の選定: 信頼できる施工業者を選び、工事の詳細を決定します。複数の業者から見積もりを取り、比較することが重要です。
工期はリノベーションの内容により異なりますが、一般的には3ヶ月から6ヶ月程度かかります。
工事の実行: リノベーション工事を実行します。工事の進捗状況を定期的に確認し、計画通りに進んでいるかチェックします。
工事完了後、再度耐震診断を受け、フラット35の最終審査を受ける必要があります。再診断には10万円から20万円程度の費用がかかります。
■フラット35の申請と審査のコツ
書類準備と申請のポイント
フラット35の申請には、いくつかの重要な書類が必要です。これらの書類を正確に準備することで、審査をスムーズに進めることができます。
建築確認済証: 建物が法律に基づいて建築されていることを証明する書類です。古民家の場合、建築確認済証がないこともありますが、その場合は代替書類が必要となります。
例えば、築50年の古民家では建築確認済証がないことが一般的です。この場合、建築士による現状報告書やその他の証明書類を提出する必要があります。
耐震診断書: フラット35の審査では、耐震基準を満たしていることが求められます。耐震診断書は、建物が耐震基準を満たしているかどうかを証明する書類です。
耐震診断書の取得には、10万円から20万円程度の費用がかかります。また、診断の結果に基づいて追加の耐震補強が必要となる場合もあります。
リノベーション計画書: リノベーションの詳細を記載した計画書です。どの部分をどのように改修するかを具体的に記載します。計画書には、工事内容、予算、スケジュールなどを含める必要があります。
例えば、耐震補強に300万円、断熱改修に200万円、設備更新に300万円の費用を見積もり、総額で800万円のリノベーション計画を立てることができます。
資金計画書: 資金計画書には、借入額、自己資金、総費用などを詳細に記載します。フラット35では、物件価格の90%までの融資が可能ですが、残りの10%は自己資金で賄う必要があります。
例えば、物件価格が3,000万円の場合、2,700万円までをフラット35で借り入れ、300万円を自己資金として用意する必要があります。
■審査に通るための注意点
フラット35の審査を通過するためには、以下のポイントに注意することが重要です。
収入と返済負担率: 収入に対する返済負担率が重要な審査基準となります。一般的には、年収の25%から30%以内の返済負担率が求められます。
例えば、年収500万円の家庭であれば、年間の返済額が125万円から150万円以内(毎月約10万円から12.5万円以内)であることが望ましいです。
信用情報: 申請者の信用情報は重要な審査項目です。過去にローンの延滞や債務整理の履歴があると、審査が通りにくくなります。信用情報機関で自分の信用情報を確認し、問題がないかチェックしておくことが推奨されます。
物件の評価: 購入予定の古民家の評価も重要です。リノベーション後に市場価値が上がることが見込まれる物件であることが望まれます。
例えば、交通アクセスが良く、地域の活性化が期待されるエリアにある物件は評価が高くなります。
自己資金の確保: 自己資金が不足していると、審査が通りにくくなります。フラット35では物件価格の10%以上の自己資金が必要ですが、20%以上を用意することで審査が通りやすくなる傾向があります。
例えば、3,000万円の物件を購入する場合、300万円の自己資金を用意する必要がありますが、600万円を用意すると審査の際の印象が良くなります。
耐震基準のクリア: 古民家の場合、耐震基準を満たすことが重要なポイントです。必要な耐震補強を実施し、耐震診断書を提出することで、審査が通りやすくなります。
■フラット35で資金計画を立てる方法
リノベーション費用の見積もりと資金計画
フラット35を利用して古民家を購入・リノベーションする場合、資金計画をしっかりと立てることが成功の鍵です。以下に、具体的な費用の見積もりと資金計画の例を示します。
1. リノベーション費用の見積もり
リノベーション費用は、古民家の状態や希望する改修内容によって大きく異なります。以下は、一般的なリノベーション費用の項目とその目安金額です。
- 耐震補強: 300万円から500万円
- 断熱改修: 100万円から300万円
- 設備更新(キッチン、バスルーム、トイレなど): 300万円から500万円
- 内装工事(床、壁、天井の改修): 200万円から400万円
- 外装工事(屋根、外壁の改修): 100万円から300万円
- その他(配管工事、電気工事など): 50万円から150万円
合計すると、最低でも1,050万円から最高で2,150万円のリノベーション費用が見込まれます。
2. 資金計画の立て方
リノベーション費用を含めた総資金計画を立てるためには、以下のようなステップを踏みます。
物件購入費: 古民家の購入費用
例えば、古民家の購入費用が2,500万円の場合
リノベーション費用: 上記のリノベーション費用
例えば、1,500万円のリノベーション費用が必要な場合
総費用: 物件購入費とリノベーション費用の合計
総費用 = 2,500万円 + 1,500万円 = 4,000万円
フラット35の借入金額: 物件価格の最大90%
2,500万円の物件価格に対して、90%(2,250万円)まで借り入れ可能
自己資金: 総費用から借入金額を引いた額
自己資金 = 4,000万円 – 2,250万円 = 1,750万円
この場合、1,750万円の自己資金を準備する必要があります。
効率的な資金の使い方
効率的な資金の使い方を考えることで、資金計画をさらに最適化できます。
1. 優先順位をつける
リノベーションの項目ごとに優先順位をつけ、重要度の高いものから実施します。
- 耐震補強: 安全性を確保するために最優先
- 断熱改修: 快適な居住環境を実現するために次点
- 設備更新: 生活の利便性を高めるために実施
- 内装工事: 美観を整えるために必要
- 外装工事: 建物の保護と美観のために実施
2. 費用対効果を考慮する
リノベーション費用に対する効果を考慮し、費用対効果の高い項目から実施します。
耐震補強: 300万円の投資で安全性が大幅に向上
断熱改修: 200万円の投資で年間の光熱費が約10万円節約可能
設備更新: 400万円の投資で生活の利便性が大幅に向上
3. 複数の業者から見積もりを取る
複数のリノベーション業者から見積もりを取り、最適な業者を選定します。これにより、費用を抑えつつ質の高い工事を実現できます。
■見積もり例
業者A: 総費用1,600万円(耐震補強400万円、断熱改修200万円、設備更新500万円、内装工事300万円、外装工事200万円)
業者B: 総費用1,400万円(耐震補強350万円、断熱改修180万円、設備更新450万円、内装工事250万円、外装工事170万円)
この場合、業者Bの方が総費用が安く、予算内で質の高いリノベーションが可能です。
■古民家リノベーションの実践的なアドバイス
専門家の意見を取り入れる
古民家のリノベーションは複雑なプロジェクトであり、専門家の意見を取り入れることが成功の鍵です。以下に専門家の活用例を示します。
建築士: 耐震診断やリノベーション計画の立案を担当します。費用は、耐震診断が10万円から20万円、リノベーション計画の設計料が物件価格の3%から5%です。
例: 建物価格が2,500万円の場合、設計料は75万円から125万円となります。
施工業者: 実際のリノベーション工事を担当します。信頼できる業者を選び、複数の見積もりを比較することが重要です。
例: リノベーション費用の総額が1,500万円の場合、内訳として耐震補強300万円、断熱改修200万円、設備更新300万円、内装工事400万円、外装工事300万円が含まれます。
インテリアデザイナー: デザインの統一感を保ちつつ、機能性と美観を兼ね備えた空間を提案します。デザイン料は総工事費の10%程度です。
例: 総工事費が1,500万円の場合、デザイン料は150万円となります。